第108回日本陸上競技選手権大会・10000M丨日程・放送予定・ライブ配信・出場選手一覧
【記録と数字で楽しむ第108回日本選手権10000m】女子:3連勝中の廣中を中心に「パリ行き切符」に挑む
放送🔴👟📺👉第108回日本陸上競技選手権大会・10000M ライブ配信
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5月3日(金/祝)、静岡県袋井市の小笠山総合運動公園静岡スタジアム(通称;エコパ)でパリ五輪代表選考会を兼ねた「第108回日本選手権・10000m」が行われる。同日の「静岡国際」が終了したあと、女子が19時30分、男子が20時10分のスタート。レースの模様は、19時25分から、NHKのEテレ(教育)で、生中継される。
ここでは、現地観戦やTV観戦のお供に、「記録と数字で楽しむ第108回日本選手権・10000m」をお届けする。
なお、2023年12月10日の日本選手権前に本コーナーで紹介した記事やデータと重複している部分もあるが、データは最新のものに更新した。
・記録や情報は、4月18日判明分。
・年齢は、2004年5月3日のもの。
・文中、敬称略。
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【女子】3連勝中の廣中を中心に「パリ行き切符」に挑む
日本選手権の申込資格記録32分30秒00以内(または5000m15分40秒00以内)をクリアした15名がエントリー(うち1名はオープン参加の外国籍選手)し、8月のパリ五輪代表を目指してしのぎを削る。()
◆パリ五輪の内定条件
五輪参加標準記録は「30分40秒00(10kmロードの記録も有効)」で有効期間は、2022年12月31日~2024年6月30日。出場枠(ターゲットナンバー)は「27」だ。
今回の日本選手権での日本陸連の五輪代表内定条件は、
A)2023ブダペスト世界選手権で8位以内の成績を収めた日本人最上位の競技者で、2023年11月1日から2024年6月30日までに、ワールドランキング対象競技会において参加標準記録を満たした競技者。
B)第108回日本選手権の優勝者で、6月30日までに参加標準記録を満たした競技者。
「A」の世界選手権8位以内の条件をクリアしているのは、ブダペストで7位だった廣中璃梨佳(JP日本郵政G)のみ。廣中は、24年6月30日までに30分40秒00をクリアすれば、今回の日本選手権での順位に関わらず内定となる。
廣中以外の選手は、「今大会優勝で6月30日までに30分40秒00をクリア」が内定の条件だ。
◆WAランキングでの出場切符は、4月16日時点で残り4枚
廣中および今回の優勝者が24年6月30日までに「30分40秒00」をクリアできなかった場合は、24年6月30日現在のパリ五輪に向けての1国3名以内の「ワールドランキング(WAランキング/Road to Paris 24)」で、出場枠の「27番目以内」に入ることが条件となる。
4月16日現在の「Road to Paris 24」では、ロードを含めて参加標準記録突破者が15名(トラック11名、ロード4名。各国4番目以下の選手を含めると計39名)、「クロスカントリー枠(3レースの平均)」による有資格者が8名で計23名。ターゲットナンバー「27」の「WAランキング」による残り切符は、4枚しか残っていない。
日本人には参加標準記録30分40秒00あるいはクロカン枠で資格をゲットしている選手はいない。「WAランキング(22年12月31日からの有効期間内の上位2レースの平均ポイント)」の順位は、以下のとおり。
・カッコ内は、自身の1番目と2番目のレースでのポイントを示す。
【JAAF】
が現時点でのターゲットナンバーの圏内。
以下は、1国3名以内でカウントしていった時の「相当順位」だ。
・氏名の前の「×」は、今回の日本選手権不出場者。
【JAAF】
上記が、日本人でランクインしている選手。
45位以降に日本人がずらりと並んでいるようにみえるが、実際には他国の4番目以下の選手をカウントしない「相当順位」で記載したのでこのようになる。有効期限内の上位2レースの平均ポイントによる実際の順位は、廣中8位、小海19位、五島23位、高島35位、林田75位、木村76位、川口79位、川村91位、矢田97位、山崎99位、村松105位、安藤107位、逸木111位、兼友114位という位置になる。
パリ行き切符を確実に手にするには「30分40秒00」をクリアすることだが、そのハードルはなかなか高い。
日本歴代でこれを上回ったことがあるのは、新谷仁美(積水化学)の日本記録(30.20.44/2020年12月4日)と歴代2位の廣中(30.39.71/2022年7月16日)の2回しかない。
21年東京五輪、22年オレゴン、23年ブダペストの世界選手権での「WAランキング」によるボーダーラインの2レース平均ポイントは、1200ptあたりだったが、今回は現段階で1215ptにアップしている。
パリに向けて、現在24番目の廣中が「1286pt」、25番目のイギリスの選手(自己ベスト30.35.93=2022年)が「1275pt」、26番目の小海が「1218pt」、27番目の五島が「1215pt」、28番目のフィンランドの選手(31.12.78=2023年)が「1201pt」、29番目のメキシコの選手(31.04.08=2023年)が「1199pt」、30番目相当の高島が「1190pt」だ。
記録ポイントのみでの「1200pt」は「30分52秒48」、「1220pt」が「30分30秒51」、参加標準記録の「30分40秒00」は「1211pt」だ。31分00秒前後のレベルでの記録ポイントの差は、概ね「1秒1で1pt差」「11秒で10pt差」というところで、五島と28番目の選手との「14pt差」のタイム差は、概ね15秒5前後である。
「WAランキング」のポイントは、「記録ポイント+順位ポイント」で算出される。
「順位ポイント」は、大会のグレードによっていくつかに区分されているが、日本選手権のカテゴリーは「B」で、各順位のポイントは以下のとおりだ。
よって、日本選手権では、ひとつでも上の順位でフィニッシュすることが「WAランキング」のポイントを稼ぐためには重要だ。1位と2位の順位ポイントの「10pt差」をタイムに換算すると約11秒差、1位と3位の「15pt差」は、16秒5くらいの差になる。ほとんど差がない胸差のほぼ同タイムでフィニッシュしても、WAランキングの順位ポイントでは、上記のようなタイム差がついたのと同じ扱いになるのだ。
また、記録ポイントが「1160pt」の「31分36秒98」であっても、日本選手権でトップフィニッシュすれば順位ポイントの「60pt」が加算されるのでトータルは「1220pt」となり、2レース平均でのボーダーラインあたりのポイントを稼げることになる。
このところの「WAランキング」のシステムでは、「27番目と28番目」のポイント差が、1点差とか同点での勝負になることもあり「0秒01差」が晴れの舞台に出場できるかどうかの明暗を分ける可能性もある。「WAランキング」のポイント(整数値)が同じ場合は、小数点以下での比較はせず、2レースのうちで最も高いポイントを獲得した選手を上位とする。2レースとも同得点の場合は、同順位となる。これらは、5試合の平均ポイントでランク付けする短距離種目なども同様である。10000mを走っての「0秒01差」が1ポイント差となるケースもあり、それが天国と地獄の分水嶺となるかもしれないのだ。
上述のような状況からすると、参加標準記録未突破の海外選手を含めて6月30日までに新たに誰も「30分40秒00」をクリアできず「WAランキング(Road to Paris 24)」での争いとなった場合、廣中は安全圏といえる。
小海が現在の廣中の2レース平均「1286pt」に並ぶには、今回の日本選手権で「1332pt」が必要だ。優勝して「60pt」が加わったとしても記録で「1272pt」が要求される。これに相当するタイムは「29分34秒21」で世界歴代7位相当。「パリ五輪メダル候補」のレベルである。
ただし、先に紹介したボーダー付近の外国人選手3名のベストは30分35秒93~31分12秒78。日本の小海、五島、高島も30分50秒台のベストを持っているので、条件に恵まれれば、「30分40秒00」をクリアできる可能性は十分にある。よって、廣中としても「30分40秒00」をクリアして、即時内定を決めたいところだ。
◆至近9年間の日本選手権での入賞歴
・今回の出場者に限る。掲載順序は、直近年の順位順
【JAAF】
・入賞歴なし(2023年の順位のみ記載)
【JAAF】
廣中が3連勝中。この種目での連覇は、5人。
【JAAF】
1988年5月12日生まれで35歳の高島由香(資生堂)は、上の表以外に14年にも7位に入賞している。日本選手権の10000mには11年が初出場(12着)、17年にも9着となっていて今回が8回目の出場となる。
今回、4連覇を目指す廣中の10000mでの全成績は以下のとおり。
<廣中璃梨佳の10000m全成績>
・記録の後ろの「◎」は、その時点での自己新
【JAAF】
◆新谷仁美の日本記録(30.20.44)の時のペース
20年12月4日の日本選手権(長居)で新谷仁美(積水化学)が30分20秒44の日本記録をマークした時の400m毎は下記のとおり。2000m手前まではチームメイトの佐藤早也伽が先導したが、下記はすべて新谷の通過タイムである。
・以下、筆者による非公式計時
【JAAF】
【JAAF】
【JAAF】
スタートからチームメイトの佐藤が引っ張ったが1000mからややペースダウン。それを感じ取って、1950m付近から新谷がトップに立って3000mまでを2分57秒0にペースを上げた。以後も1周を72~73秒台で刻み最終的には3位以下の選手を周回遅れにし、従来の日本記録(30分48秒89/渋井陽子/三井住友海上/2002.05.03)を一気に28秒45更新した。2020年の世界2位、この時点での世界歴代21位だった(24年4月18日現在、歴代40位)。
◆廣中璃梨佳の自己ベスト(30.39.71)の時の1000m毎
2022年7月16日のオレゴン世界選手権で廣中が30分39秒71(12着)の自己ベストを出した時の1000m毎は、以下のとおり。通過記録の前のカッコ付き数字はその地点での通過順位を示す。
【JAAF】
今回、新谷の日本記録(30.20.44)を更新できれば万々歳ではあるが、なかなか高いハードルである。パリ五輪代表を目指す選手たちにとっては、まずは五輪参加標準記録「30分40秒00」をクリアすることが大きな目標であろう。その点で、廣中のベストはそのターゲットとピタリ同じで、参考になりそうだ。
この時の廣中は世界の大舞台で5000mまでを3分03~04秒の安定したペースでトップを引いた。
5000m過ぎに先頭を譲ったが、5000~6000mは集団のペースがダウン。廣中は7000mまでトップ集団に食らいついたが、そこからトップが1000m2分57~58秒にアップしたことで次第に離された。
廣中は8000m~9000mに3分06秒52を要し、9000mでは11番目で先頭と12秒37差、8番目とも11秒37差となって入賞が厳しくなった。9600mでは19位の位置にいたが残り1周を踏ん張った。
ラスト400m69秒29、最後の100mを16秒87でカバーして12着(30.39.71)でフィニッシュ。翌年の2023ブダペスト世界選手権の参加標準記録30分40秒00をギリギリのところでクリアしたのだった。
この時の廣中は、「前半15分19秒28」に対し「後半15分20秒43」。その差は僅か1秒15しかなかった。
新谷の日本記録(30.20.44)の時も「前半15分06秒8」に対し「後半15分13秒6」で落差は6秒8だった。
これまでの世界や日本での様々な競技会で好記録が出た時のペースを調べると、前後半の落差が数秒、あるいは後半の方が速かったということが多い。
「前半で貯金を作って……」とハイペースで突っ込むと、踏ん張りどころの6000mあたりから苦しくなって終盤に大きくペースダウンしてしまうというケースをよく見かける。そうなると、ラスト1000mや残り1周のスピードも上がらずに、結果的には、「前半の貯金」を大きく取り崩してしまい目標にほど遠い結果に終わってしまうことも多いようだ。
レース当日の気象条件にもよるが、「30分40秒00」がターゲットであれば、そのイーブンペースは、1000m「3分04秒0」、400mならば「73秒6」だ。
そこから大きく外れることなくスタートから安定したペースを刻み、苦しくなってくる6000mから8000m過ぎでペースダウンせずに踏ん張れるかどうかがポイントだろう。5~10秒くらいの「遅れ」は、残り1000mや400mの「最後の底力」のキックで、十分に取り戻せる可能性がある。
5000m14分57秒63の資格記録でオープン参加のジェプングティチ・ジュディ(資生堂)は、23年12月10日の日本選手権(9000mで途中棄権)に続いての出場で自身3度目の10000m。23年7月8日に標高約1600mのナイロビでの世界選手権ケニア選考会の33分04秒20(12着)が初10000mでそれが自己ベスト。5000mのベストは、22年の14分50秒20。前回も日本人選手にとっての「いいペースメーカー役」を9000mまで果たした。
「ペースメーカー」といえば、23年に続き導入されるのが、「電子ペーサー(ウェーブライト)」である。トラック内側の縁石のところに1m毎にLEDライトを設置し、設定したペースで発光していく機器だ。
ライトは何色か(3~4色)に色分けができ、いくつかの目標記録別に点灯させることができる。
今回の日本選手権での設定ペースは、この原稿の締め切り時点(4月21日)では明らかにされていないが、「日本記録の30分20秒」「パリ五輪参加標準記録の30分40秒」に設定される可能性が高く、その他にも2種類くらいのペースが設定されることになるだろう。
◆日本選手権での着順別最高記録
【JAAF】
トップと5着以下は20年。2~4着は23年のレベルが高かった。23年はトップ(30.55.29)からの4人が3秒54の間にフィニッシュラインになだれ込む大接戦だった。
◆2015年以降の世界大会の日本代表とその成績
2015年以降の世界選手権と五輪の代表と本番での成績は以下のとおり。
<至近7世界大会の代表と成績>
「★」は、今回の日本選手権出場者。
【JAAF】
【JAAF】
上記のとおり、今回の出場者で世界大会代表の経験があるのは、高島(15・16年)、廣中(21・22・23年)、五島(22・23年)の3人。
8月のパリ五輪には、誰が出場してどんな結果を残すことになるか……。
野口純正(国際陸上競技統計者協会[ATFS]会員)
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